2019.11.11 Monday 12:30

第50回埼玉文学賞 受賞作品 

第50回埼玉文学賞 

彩の国・埼玉りそな銀行第50回埼玉文学賞が決定しました。

俳句部門は応募104点、準賞2点が選ばれました。

 

準賞 「雨の中」伊藤恭子

   「歩かねば」渡辺智恵

 

佳作 「柱」浅野都

   「耕」島田禎二

   「大滝の森」金子和美

   「冬木の芽」須田真弓

 

準賞受賞作品

歩かねば    渡辺智恵

 

土埃なかなか去らぬ暑さかな

炎帝と違ふ尺度で生きてゐる

向き合へる暑さ向き合へない暑さ

日除けして息をひそめてゐたりけり

分かれたきレールもあらう日の盛り

戦争をしたい人ゐる油照

向日葵が溶けてバターになりさうな

夕立のすぐに乾くや閻魔堂

いつまでも追いかけて来る蝉時雨

積めるだけ人詰め込まれ冷房車

溽暑なり遠い記憶の鰓呼吸

片陰を出で行列のなほ続く

蝙蝠や三百頭の牛眠る

鎮まらぬものに水打つのがやつと

風鈴の炎を思い出すことも

熱帯夜ダリの時計が垂れ下がる

言ひさして言はずにおけり心太

空蝉の殻を破るは一度きり

暑さにも水晶ほどの純度あり

歩かねば風死せるまま歩かねば

 

 

雨の中     伊藤恭子

 

御降りのあとかたのなく雀来る

寒卵素直に割れて雨上がる

野を横に雨の走りて蕗の薹

椿落つ雨三日目の石畳

茶碗蒸しの底の銀杏春時雨

利休忌や夜に入りても止まぬ雨

降りはなの雨なら濡れて桃の花

初桜昨夜の雨の雫かな

雨こまやかに薔薇園の鉄扉かな

小刀で削る鉛筆傘雨の忌

アイロンに当て布梅雨の家広し

永遠に止まぬ雨かも太宰の忌

中庭を濡らす雨見て泥鰌鍋

シーサイドホテル裏口半夏雨

雨だれの百会に四万六千日

八分目折れ鶏頭が雨の中

荒物屋米屋呉服屋秋黴雨

河原の石より濡れて秋深む

柳葉魚焼く火を宥めたり冬の雨

目薬の後のまばたき霙降る

 

その他の部門作品

 


<<new | 1 / 1pages | old>>
 
CALENDAR
NEW ENTRY
ARCHIVES
CATEGORY
COMMENT
PROFILE
MOBILE
LINK
RECOMMEND
SEARCH
OTHER

(C) 2024 ブログ JUGEM Some Rights Reserved.