野良猫となりし由来を聞く冬日 柳田泰子(紫 2012年3月号より)
突然ではあるが、わたしはすべての動物の中で一番だといえるほど、猫が好きだ。道で野良猫を見つければその場に立ち止まり、声をかけずにはいられない。
ほとんどの野良は警戒し、あわてて逃げていってしまうが、ときにものすごく人懐こい猫に出会えるときがある。こちらにすり寄り、甘えた鳴き声を上げてくる。そのあまりにも人に慣れた様子から、もしかしたら昔は人間に飼われていたのかもしれないと思う。
掲句の猫は、きっとそんな猫だろう。
冬の日ざしはまぶしいが、空気はやはり冷たい。そんなときに、猫の高めの体温や毛皮の柔らかさを感じつつゆったりと過ごせたら、とても満ち足りた気持ちになるだろう。
この野良猫はこのあと、寄り添っていた人間の家に、一緒に帰るのかもしれない。
豊永裕美(紫)