2017.03.24 Friday 10:41

俳句つれづれ

俳句つれづれ 第8回 「橋本多佳子」

 

鳥海美智子

 

 雪激し抱かれて息のつまりしこと   多佳子

 

 俳句とはこんなに女の情念を品良く描き出せるのかと驚いた。

橋本多佳子は18歳で橋本豊次郎と結婚し、38歳で夫を喪った。

豊次郎はもともと病的で結核療養ののち昭和12年に死去した。

掲句は昭和23年から26年に作られているから、月日の経過と共に

内奥に沈殿していた感情を俳句の力によって引き出したのであろう。

 

 雪激し夫の手の他知らず死す

 

 雄鹿の前吾もあらあらしき息す

 

 罌粟ひらく髪の先まで寂しきとき

 

 夫恋へば吾に死ねよと青葉木菟

 

 寒月に焚火ひとひらづつのぼる

 

 乳母車夏の怒濤によこむきに

 

 祭笛吹くとき男佳(よ)かりける

 

 上記の句は第三句集『紅絲(こうし)』(昭和26年刊)に

収録されており、晩年の格調高い句境より多佳子らしさが一番良く

表現されていて、私の好きな句集である。

 

 多佳子は大正11年(1922年)杉田久女に俳句の手ほどきを受け、

昭和10年、36歳で生涯の師、山口誓子に会い、本格的に俳句を学ぼうとする

昭和12年に夫の豊次郎と死別した。

 

 4人の子供の母として、自立しながら俳人の道を歩むこととなった多佳子は

内なる自分を解放し、見事に結実させて、昭和俳句を代表する女性俳句の

第一人者となった。

 

 

(「紫」無門集同人)

 

雪

 

 

 

 

 

 


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