2017.07.21 Friday 11:21

俳句つれづれ

俳句つれづれ 第12回 「桂信子」

 

鳥海美智子

 

 

 ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき  信子  

 

 この句ほど自分が女であることを前面に出した句はない。

昭和14年に桂七十七郎(なそしちろう)と結婚した信子は、

丸2年にも満たない16年9月、喘息発作によって夫は急逝、

信子は26才であった。実家に帰った信子は生涯独身を貫き、

俳号「桂信子」を変えなかった。

 

 ひとづまにゑんどうやはらかく煮えぬ

 

 ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜

 

 やはらかき身を月光の中に容れ

 

 窓の雪女体にて湯をあふれしむ

 

 

こちらは初期の代表句であるが、昭和24年第1句集『月光抄』、

昭和三十年代2句集『女身』は社会性に乏しいということで

不評であった。信子は「社会性俳句旋風のただ中、私は14,5年

鳴かず飛ばずでじっとしていた。しかし私はそれでもよいと思っていた。

自分の丈にあった俳句を作り続けていればよい。そんな気持ちだった。」

と述べている。

後年、信子のこのような真摯な俳句人生は、平明で自然と一体となった

句境の作品として結実した。

 

 

 ごはんつぶよく噛んでゐて桜咲く

 

 たてよこに富士伸びてゐる夏野かな

 

 忘年や身ほとりのものすべて塵

 

 冬滝の真上日のあと月通る

 

 青空や花は咲くことのみ思ひ

 

信子は平成7年1月の阪神淡路大震災で家を被災。

 

 寒暁や生きてゐし声身を出づる

 

 長いホテル住まいの後、西宮市の有料老人ホームに入居する。

 

 春の暮われに家といふは無し

 

 夏怒濤海は真(まこと)を尽くしけり

 

 元日やまつさらの空賜ひたる

 

 平成16年12月16日満90歳で亡くなるまで俳句を読み続けた。

 

(「紫」無門集同人)

 

簾

 

 

 

 

 

 

 


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